マリンスキーオペラの「エフゲニー・オネーギン」を見た。
2016年10月16日 上野文化会館
オネーギン:ロマン・ブルデンコ
タチヤーナ:エカテリーナ・ゴンチャロワ
レンスキー:ディミトリー・コルチャック
オルガ:ユリア・マトーチュキナ
グレーミン公爵:エドワルド・ツァンガ
自分の忘備録として思うところを書いておきたいと思う。
私は今までルネ・フレミングとアンナ・ネトレプコのメトロポリタンのオネーギンを(映像で)見ている。
今回思ったこと。
レンスキー役のドミトリーコルチャックは洗練された容姿と明るく透明感のあるテノールで彼が登場するとあたりの空気が変わるほどスター性があり、会場の拍手もひときわ大きかった。
しかし…
このオペラにおいてレンスキーというのはオネーギンとの対比として、「田舎者のイケてない男性」だ。
レンスキーは誠実で実直で、でも冴えなくて女性からは「いい人なんだけどね」で済まされてしまう。特に若い女性には彼の良さがわからない。
それに比べてオネーギンは都会で洗練されていて遊び人で高慢だけれど少し不幸の影が見え隠れし、だからこそ、タチヤーナはオネーギンに一目ぼれをし、レンスキーの婚約者であるオルガもオネーギンに惹かれる。
なのにコルチャックのレンスキーは輝くばかりに素敵すぎちゃって、オネーギンが単なるダメ男に見えてしまう。
2幕目のパーティーシーンは華やかで音楽もさすがでその後の決闘シーンとの落差も際立ち、素晴らしい。
3幕目、オネーギンはパーティで、結婚して社交界で豊に暮らしているタチヤーナに再会する。
ここはこのオペラでも重要な見どころのひとつ。
田舎の冴えない娘だったタチヤーナは、すっかり素敵に洗練された女性となっている。
…はずが、全然変わってなかったんだけど…。
ここは歌手の力量不足か。
せめてもう少し、まわりの女性たちとドレスの色を変えるなどして、目立つような工夫がほしかった。
パーティーのシーンで大勢の人がいるなかで、「どれだっけ?」と探してしまうようではちょっと…。
そこへいくとアンナ・ネトレプコのタチヤーナは見事であった。
彼女の田舎娘っぷりはやや無理があったけれど、もともとの愛嬌のあるキャラでこなし、そして第3幕の登場はまさに「女帝」といった貫録を見せていた。
今回のタチヤーナはオネーギンの「タチヤーナはすっかり洗練されあの時の田舎娘とは全然違う」という説明的つぶやきがなければ、見ているこちらが変化に気が付かないぐらいだ。
タチヤーナの結婚相手のグレーミン公爵のアリアもやや物足りず。
やや低音が苦しそうであった。
ペトレンコで聴きたかったぞ。
最後にオネーギンがタチヤーナに迫るシーンでは、またまた頭の中に「寝言は寝てから言え」がよぎり、見てるだけで腹が立ってきたり「よかったよね、こんなのと結婚しなくて」と思ったり 笑
タチヤーナが「私も今でもあなたのことを愛しています」と言ったときには「まじか!?」とつっこんだり。
いろいろ思うところ満載で、めっちゃ楽しめたオペラだった。