まだこれをやってないから死ねない!ということを残しておくこと

「まだこれをやってないから死ねない!という夢は常に残しておかなければいけないよ」これは、私が20代のころ、一緒に仕事をしていた50代女性からいただいたアドバイスで、折に触れて思いだす言葉です。

わたしは子供の頃から持病があって、長く入院と自宅療養を繰り返していたため「自分は長生きしない」と思い込んでしまっており、それがいまの「モノゴトを先延ばしにできない」せっかちな性格を形成していると思われます。

いまになってみれば、予定より随分長生きしちゃってるのですが、こうなるとたまに遭遇するのが「全部やってしまった。今後とくにやりたいことがない…」という病。

わたしは周りから見ると「すごくやりたいことがいっぱいある」ように見えるらしいのですが、実はそれほどでもなく、というか小さなやりたいことは日々たくさんあるものの特に大きい夢はありません。

「小さなやりたいこと」を「先延ばしにできない性格」でどんどん取り組んでしまうため、ふと「やりつくしてしまった」感にさいなまれます。

この時思いだすのが、冒頭の「まだこれをやってないから死ねない!という夢は常に残しておかなければいけない」なのです。

人間生きていれば、死んだ方がラクだと思わされることはたくさんあるわけで、そういう時に「いや、わたしはまだこれをやってないから死ねないのだ」というものがあるかどうかで、踏ん張れる力が随分違うだろうな、と思うのです。

なかなか達成できない大きな夢を持つことは、わたしにはかえってストレスになりそうで向いていないことだけど、その代り、ちいさくて簡単に叶うたくさんの夢を先々の予定にちりばめることにしている。

こんなことを考えたのは、2日前に2年ぶりのゲルギエフの凄すぎる公演を見て「いやあ、もういつ死んでも思い残すことないわー」とまた思ってしまったから。
そう思って、ふと思いなおす。
「あ、まだ土曜日の公演がもうひとつ残っているんだった!それまでは死ねないわー。」
そして、明日の公演を聴いたらまた、燃え尽きるかもしれない。
そう思って11月にも大好きなヤンソンスのコンサートを入れてある。

わたしも自分の思考の癖をようやく把握し、どうやら先手を打てるようになってきたらしい。